(注)この記事を書いた後に、この切手が郵便為替証書に貼付された使用例を入手しました。その証書上には「この証書と引換に、金○○を支払ってください。」といった文言がスペイン語で書かれています。
この記事の、代金引換小包切手という説は、上記の郵便為替証書を見た昔の収集家が、為替手形に関する知識が無かったか、スペイン語を誤訳したかで、代金引換小包の証書と勘違いした可能性が高いです。
詳しくは、次の記事をご覧下さい。(2009年6月21日)
http://aramaki.way-nifty.com/stamp/2009/06/post-33e1.html
今年最初の書き込みは、前回の「世界最初の年賀切手」に続いて、「世界最初の小包切手」の番外編をご紹介します。
コロンビアが、1865年に発行した三角切手がそれです。(画像では、4枚ブロックのものを展示)
コロンビアは、世界で3番目に三角切手を発行した国です。この三角切手は、スコットカタログでは、普通切手のコーナーに記載されていますが、脚注を読むと"used as a carrier stamp"と書かれています。
このcarrier stampというのは、本来は、政府の郵便配達網が末端地域まで整備されていない地域で、郵便局から宛先までの配達を請け負う民間業者が発行する、一種のローカル切手を意味します。しかし、この切手は政府発行の切手ですので、ちょっと性質が違うようです。
この切手の用途・分類についての手がかりがもう一つあります。それは、2002年にオランダで開かれた国際切手展"Amphilex 2002"において大銀賞を受賞した、Rene Gerritsen氏の"The triangle stamp"という作品での分類にあります。
実は私は、この出品者を個人的に知っていたので、主なリーフのコピーを送ってもらったのですが、そこでは、この三角切手を"Cash on delivery parcel stamps"として表記して分類していました。これを和訳すれば、「料金着払小包切手」あるいは「代金引換小包切手」といったところでしょうか。ひょっとしたら、スコット以外で、"Cash on delivery parcel stamps"として分類しているカタログがあるのかもしれません。
また、リーフの説明書きの中では「この切手は、おそらくコロンビアが郵便合意をしていない国-countries(郡-countiesの誤りかも?)宛の郵便物に使われた」「料金未払郵便物に使われたとも言われるが事実はハッキリしない」とも書かれています。
これらの限られた資料からの推測になりますが、当時のコロンビア政府の郵便配達網がそれほど整備されていたとは思えませんので、郵便は都市の郵便局留め扱いが通常で、それを郡部の自宅に届けてもらうには、別途配送料を払って民間業者に配送を依頼する必要があったのでしょう。
この場合、この切手が民間業者の配送料の支払用と考えると、つじつまが合わなくなります。この切手は業者ではなく政府が発行したものですし、第一、配送料にしては額面が安すぎます。
そこで私が考えるには、民間業者から郵便局に対して1件あたりいくらかの手数料(キックバック)を払うことになっており、その手数料支払のために、民間業者が購入・貼付する切手だったのではないのでしょうか。そして郵便局から宛先までの配送料は、配達時に受取人から現金で徴収すれば良いことです。また、民間業者の本業は荷物運送業だったでしょうから、郵便物の種類としては封書もあったかもしれませんが、小包が主だったのでしょう。
そう考えれば、carrier stampと呼んでも、Cash on delivery parcel stampsと呼んでも、どちらでも一応の説明が付きます。
ということで、純粋な小包切手かどうかハッキリしないこともあり、スコットカタログでは普通切手の扱いとしたのでしょう。したがって、小包切手の番外編といった感じです。
なお、コロンビアからは、1869年にもcarrier stampが発行されていますが、これは、世界唯一の「直角不等辺三角形」の切手です。特殊な用途の切手なので、目立つ三角切手にしたのでしょう。
ちなみに、カタログで小包切手として分類されたものの最初は、椙山さんがコメントしてくださったとおり、コロンビアの切手より14年後に発行された、1879年のベルギーの鉄道郵便小包切手です。これはベルギー国鉄が発行した鉄道便用の切手であり、本来の小包切手とは性質が違います。
コロンビアとベルギー、どちらも本来の小包切手ではありませんので、カタログに小包切手として分類されるかどうかは紙一重の差に過ぎないと言えるでしょう。
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